- かた
- I
かた【夥多】おびただしく多い・こと(さま)。II
「異同~なるを厭ふ/明六雑誌 10」
かた【形・型】(1)外見に現れたかたち。 かっこう。 《形》「髪の~を整える」「~がくずれる」(2)相対的な特性によって区別される性質や形態。 タイプ。 《型》「新しい~の車」「~によって分類する」(3)同種類の物を幾つも作る時, 基にする枠や紙。 ひながた・鋳型・型紙など。 《型》「石膏(セツコウ)を~に入れる」「~を取る」(4)スポーツ・芸道などで規範とされる一定の体勢や動作。 フォーム。「柔道の~」「~が決まる」
(5)習慣で決まっている形式。 しきたり。 慣例。 《型》「~を破る」「~のとおりに行う」(6)借金が返せない時の保証として相手に渡す約束をした物。 抵当。 担保。 《形》「土地を~に借金する」「借金の~に家屋を取る」(7)前に物事のあったことを示すしるし。 あとかた。 形跡。「所せく集ひし馬・車の~もなく/源氏(須磨)」
(8)絵図。「~にかきても見まうきさましたり/源氏(末摘花)」
(9)模様。「着る物の~にてばし侍るか/仮名草子・伊曾保物語」
(10)うらないの結果。 うらかた。「告(ノ)らぬ妹が名~に出でむかも/万葉 3488」
(11)銭の文字のある方の面。 銭の表。⇔ 縵面[物類称呼](12)(「がた」の形で)(ア)名詞の下に付いて, ある物に似たかたちをしていることを表す。 《形》「扇~」「ピラミッド~」(イ)名詞や形容詞の語幹の下に付いて, ある性質・形式をもつことを表す。 《型》「 A ~の血液」「冬~の気圧配置」「ハムレット~」「うるさ~」~に嵌(ハ)ま・る一定の形式・習慣に従って特徴がなくなる。 新鮮味がなくなる。「~・った式辞」
~に嵌(ハ)・める一定の枠に入れて特徴をなくする。 規格化する。「子供を~・めてしまう画一教育」
~の如(ゴト)く決まった形式のとおり。 かたどおり。III「安普請ではあつたが, ~床の間もあつて/平凡(四迷)」
かた【掛搭・挂搭】〔仏〕(1)その寺に滞在を許された禅僧が錫杖(シヤクジヨウ)を禅堂の搭鉤(トウコ)に掛けること。(2)禅僧が行脚をやめて一か所に長く滞在すること。IVかた【方】※一※ (名)(1)方向。 方位。「東の~, 三〇里」「職(シキ)の御曹司を~悪(ア)しとて/枕草子 161」
(2)〔「北の方」のように, 貴人を呼ぶのに居所の方角を用いたところから〕人を敬っていう語。「あの~は, よい~です」「男の~」
(3)ところ。 場所。「道なき~」「黒羽の館代浄坊寺なにがしの~におとづる/奥の細道」
(4)(多く下に打ち消しの語を伴って)手段。 方法。「憤懣やる~なし」「言はむ~なく, むくつけげなる物来て/竹取」
(5)頃。 時分。「来(コ)し~行く末」「この世を去らんとする時にこそ, はじめて過ぎぬる~の誤れる事は知らるなれ/徒然 49」
(6)二つに分かれたものの一方。 仲間。 組。「左・右と~わかたせ給ふ/源氏(絵合)」
(7)味方。 多く「方をす」の形で用いる。「娘, 夫の~をして/狂言・水引聟(天正本)」
(8)物事の分野。 方面。 あたり。「宮仕への~にも立ち馴れ/更級」「なつかしうなまめきたる~は/大鏡(昔物語)」
※二※ (接尾)(1)動詞の連用形に付いて, そのことを行う方法または, そのありさまの意を表す。 様(ヨウ)。「作り~」「 話し~」「痛み~」
(2)人名に付いて, 寄宿している場所を表す。 ところ。「山田~」
(3)「お」を冠した数を表す語に付いて, その数の人を尊敬していうのに用いる。「おふた~」「お三(サン)~」
(4)〔「がた」とも〕数量や時を表す名詞に付いて, それくらい・そのころであることを表す。「五割~高い」「暮れ~」「朝~」
(5)〔「がた」とも〕動詞の連用形や名詞に付く。 (ア)必ず相手があると予想される場合の, 一方の側を表す。 側(ガワ)。「父~」「母~」「売り~」「買い~」「敵~」(イ)ある組織内でその方面に関係する人を表す。 係。 担当。 「囃子(ハヤシ)~」「衣装~」「道具~」(ウ)それをすることを表す。 「撃ち~やめ」「依頼~お願いします」
→ がた(方)~明・く陰陽道で方角のふさがりが除かれる。「~・きなばこそは参りくべかなれと思ふに/蜻蛉(中)」
~が付・く〔「片が付く」とも表記〕物事の処理が終わる。 物事のけりがつく。 決着がつく。~違(タガ)・う方違(カタタガ)えをする。「大殿へは~・へむとて渡り給ひにけるを/源氏(夕霧)」
~塞(フタ)が・る方塞がりになる。「~・りけれど/大和 8」
~を付・ける〔「片を付ける」とも表記〕物事をきちんと処理する。 けりをつける。 決着をつける。V「長年の争いに~・ける」「金で~・ける」
かた【潟】(1)砂州または沿岸州によって海と切り離されてできた湖や沼。 狭い水路で海に通ずるものもある。 潟湖(セキコ)。 ラグーン。 石川県の河北潟はその例。(2)遠浅の海で, 潮の干満によって陸地が現れたり水面下に隠れたりする所。 干潟(ヒガタ)。(3)浦。 入り江。 今も「松浦(マツラ)潟」「清見潟」のような地名に残っている。VIかた【片】〔「かた(方)」と同源〕名詞に付く。(1)(ア)二つそろったものの一方の意を表す。「~親」「~思い」「~敷く」(イ)すくない, わずかである意を表す。 「~時」(ウ)完全でない意を表す。 「~言(コト)」(エ)中心より離れ, 一方に寄っている, へんぴである意を表す。 「~田舎」「~山里」
(2)〔上代の用法〕動詞に付いて, ひたすらそれをするさまを表す。「~待つ」「~設(マ)く」
→ 片や~が付・く「方が付く」に同じ。〔「片付く」からの類推表記〕~を付・ける「方を付ける」に同じ。〔「片付ける」からの類推表記〕VIIかた【肩】(1)首の付け根から腕の付け根に至るまでの胴体の上側の部分。「~に担ぐ」「~が張る」「~を寄せ合う」
(2)動物の前肢・翼などが胴体に接続する部分の上側。(3)衣服の{(1)}に当たる部分。(4)山・道などの人の{(1)}に似た部分。 (ア)山の頂上から少し下がった平らな部分。「山の~」(イ)道の谷側の端。 「路~」
(5)文字や物の, 上のかどの部分。「表紙の右~」
(6)物を投げる力。「~がいい」「鉄砲~」
(7)担ぐ力。 転じて, 責任。 負担。「~代わり」
(8)〔肩に倶生神(グシヨウジン)が宿っていて人の運命を支配するという俗信から〕運。「~のよい者の幸せ見よ/浄瑠璃・万年草(中)」
~が怒(イカ)・る(1)肩が高く張っている。 いかりがたである。(2)肩身が広くなる。「お供についたわしらまで, ほんに~・つた/浄瑠璃・卯月の潤色(中)」
~が凝(コ)・る(1)肩の筋肉がこわばり, 肩が重苦しくなる。 肩が張る。(2)緊張させられる。 肩が張る。「肩の凝らない軽い読み物」
~が張・る(1)「肩が怒る」に同じ。(2)「肩が凝(コ)る」に同じ。~で息をする上下に肩を動かし, 荒い息をする。~で風を切・る肩をそびやかして得意げに歩く。~にかか・る責任・義務などが負いかぶさる。 双肩にかかる。「一家の生活が長男の~・った」
~の荷が下・りる責任や負担がなくなり気が楽になる。~を怒(イカ)ら・す肩をそびやかして威圧的な態度をとる。~を入・れる後援する。 ひいきする。 加勢する。 肩をもつ。「芸術家の卵に~・れる」
~を落と・す気落ちしてしょんぼりする。 落胆する。~を貸・す(1)傷ついた者・病気の者などを肩につかまらせて支えてやる。(2)手助けをする。 後援する。~を竦(スク)・める肩をちぢめるしぐさをする。 恐れ入った, あきれた, 不本意だ, などの気持ちを表す。~を窄(スボ)・める(1)寒くて肩をちぢめる。「雪の中を~・めて歩く」
(2)肩身が狭く感じられて小さくなる。~を叩(タタ)・く(1)肩のこりをほぐすため, 肩を手でたたく。(2)上役が部下に退職を勧める。→ 肩叩き(2)~を並・べる(1)並んで立つ。(2)同じような力や勢いをもつ。 対等な地位に立つ。「名人・上手と~・べる」
~を抜・くそれまで負っていた負担・責任をのがれる。 手を引く。「わしは~・く程に/歌舞伎・お染久松色読販」
~を張・る威勢のある態度を示す。 いばる。~を持・つひいきをする。 味方をする。VIII「女房の~・つ」
かた【過多】必要以上に多すぎる・こと(さま)。⇔ 過少「胃酸~」「~な情報」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.